ベジガール

ベジ20代女性。大学で動物倫理・ビジネス専攻。

お肉を食べると法律違反?天武の殺生禁止令

日本でのベジタリアンといえば、精進料理とかマクロビを思い浮かべるかもしれません。

長い日本の歴史の中で、お肉を食べることを禁止されていた時代があったのをご存知ですか?

そもそも、日本人はいつからお肉を食べていたのでしょうか?

 

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天武の殺生禁止令(675年) 

天武天皇四年卯月庚寅条。

「今後、漁民・猟師は、落とし穴をつくったり仕掛け弓などを設置したりしてはならない。また、四月一日から九月三十日までは、河川にヒミサキリ簗を設置してはならない。くわえて牛・馬・犬・猿・鶏の肉を食べてはならない。これ以外は禁止しない。もしこの禁止令に違反する者がいれば罪科に処する。」 

 

日本書紀』に、天武天皇によってウシ、ウマ、イヌ、サル、ニワトリといった人間の身近な動物の肉食を禁じる殺生禁止令が出されたと記されています。

 

逆にそれまでは、このような動物の肉食は常であったことがわかります。この法律は少なくとも675年には日本人はお肉を食べていたということを示します。

特にイノシシとシカは「シシ」として最もよく食べられていたと言われています。

 

この法律は、「お肉一切禁止!」というものではなく、4月1日から9月30日までの半年間の禁止期間外や、定められた動物以外の肉食は禁じられていません

だから、この法律は「肉食禁止令」とは言えないのですね。

 

なぜ、このような法律が制定されたのでしょうか?

その背景には、以下の2つが考えられています。

 

1.国家思想としての仏教の普及:仏教は殺生を戒めるゆえに肉食を禁じる。

 

2.国家としての実利的な政策:肉食の禁止期間(4月1日から9月30日)は農繁期、10月から3月は農閉期にあたる。食料生産の向上の困難により慢性的な食糧危機が続いていた古代日本では、狩猟を禁じ、農業生産を中心に行うことを企図したと考えられている。

 

ただ、天武の殺生禁止令には様々な解釈があり、

 

●「四月一日から九月三十日まで」なのは「河川にヒミサキリ簗を設置」することだけなのではないか?(「四月一日から九月三十日まで」がかかる文の解釈)

 

●法令発令前後はかんばつや飢餓が深刻だったから発令されたので、水田稲作の期間に限定した禁令とは言えないのではないか?

 

●4~9月は国家的な仏事が行われる準備期間であったとも考えられているため、国家的仏事にのぞみ、人民に精進潔斎を命じたのではないか?

 

などという意見もあります。

 

 

 参考